横浜市営バスの収支と運行頻度②~若葉台営業所~
前回の記事では横浜市営バス全路線での収支と運行頻度の関係と傾向を見ていきました。
今回の記事からは営業所ごとに損益が高い路線・低い路線の特徴などを一部ピックアップして解説していこうと思います。
本記事では若葉台営業所の路線を解説します。
まずは若葉台車庫路線の営業係数と運航頻度の散布図を見てみましょう。

営業係数が100未満の路線が2路線しかなく、収益性の観点からはかなり苦しい営業所という風に読み取れますが、その一方で運航頻度は非常に高い路線が特に2つあります。
23系統
こちらは運航頻度が642(1週間)、営業係数93.9の路線で、若葉台営業所の中では最も営業係数が低いかつ運航頻度が高い路線となっています。実はこの系統にはいくつかの別路線が含まれるのですが、メインの路線は東急田園都市線の青葉台駅から若葉台中央を結ぶ路線となっています。ではそもそも若葉台中央とはどこにあるのでしょうか?
若葉台中央は横浜市旭区にある大規模団地である若葉台団地の中心部にあります。若葉台団地は80年代ごろに完成し、築年数はかなり古くなっているものの現在でも約14000人程度の方が住んでいます。[http://]
この団地の特徴として、近くに鉄道駅が存在しないことがあげられます。そのため、通勤やお出かけの際はかなりの方がバスを利用することになるため、数多くのバス路線が乗り入れています。
その中でも青葉台駅と若葉台中央を結ぶ路線は3つあり、その中でも所要時間が最も短いのがこの23系統になっています。さらに、この路線は東急バスとの共同運航となっており、日中の時間帯は合わせて1時間当たり約8本の運航頻度となっているため、利用者にとっても待たずに乗れるというイメージが定着しているのでしょうか。
冒頭でも触れた通りこの系統には複数路線がありますが、それらは青葉台駅~三保中央と中山駅前~若葉台中央です。後者は平日両方面各1本ずつ、前者は1時間に1本運航の路線となっており、営業係数や運航頻度はほぼ若葉台路線の影響が大きいと考えられます。
65系統
一方でこちらも23系統とは経由地が違うだけで同じ場所を結んでいますが、営業係数は100を上回っています。日中時間帯は1時間当たり約6本運行されており、こちらも待てばすぐに乗れそうな運航頻度です。ただし23系統とは経由地が異なるため青葉台駅までの所要時間は少し長くなります。(長くなるといっても数分ですが)
また、以下の地図において23系統は霧が丘センター前というバス停を通っていますが、この付近には霧が丘グリーンタウンと呼ばれる団地があり、多くの乗降客が見込まれます。65系統はこの団地をほとんど通らないことが23系統よりも営業係数が高くなっている一つの要因かもしれません。

ただここまで営業係数が悪いと将来的には減便対象になる可能性も大いにあります。ましてや23系統という代替手段が存在するため、会社としても減便するのはさほど難しくないでしょうし…
ここからは完全に私の憶測ですが、連接バスをこの地域へ導入することも検討しているのではないかと思います。この辺りは道幅も十分ありますし、それなりの乗客数もあるため運航効率化の観点からすれば大いに可能性のある話だと思います。さらに、青葉台駅では本年度(2024年4月)から東急バスが青葉台駅~日体大間で連接バスを導入しているので、青葉台駅の連接バスの導入実績はすでにある状態です。
また、横浜市営バスでもみなとみらい地区においてベイサイドブルーと呼ばれる連接バスを数年前から運航しているため、その他の地域へ導入するための準備期間ともとらえられます。もし連接バス導入が実現されれば若葉台周辺のダイヤにも大きな変化がありそうです。
177系統
こちらは営業係数が217.6、運航頻度が97の路線となっており、若葉台営業所の中で最も営業係数の高い路線となっています。この路線はJR横浜線の十日市場駅と奈良北団地折返場を結ぶ路線で日中は1時間に1本の運航となっています。途中には田園都市線の田奈駅とこどもの国線の恩田駅・こどもの国駅を通りますがいずれも乗降数が多い駅とは言えません。また、途中には買い物施設も少なく、地域住民の足になっているといった印象です。また、十日市場駅も横浜線のみが停車する駅のためターミナル駅ではありません(快速も通過)。一方で奈良北団地はURが管理しており現在でも多くの人が住んでいます(ちなみに横浜市の最北端)。
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また、駅からも遠いため、多くの人々がバスを利用すると考えられますが、この団地に乗り入れるメイン路線は青葉台駅へ向かう東急バスの路線です。青葉台から田園都市線にのれば東京方面へ乗り換えなしで行けます。そのため177系統は奈良北団地の方の利用も望めず、経由地にも買い物施設がないかつ、畑があるような田園地域を通るため、このような営業係数になっているのだと思われます。この路線はもともと、前述の23系統の別路線として中山駅前~奈良北団地折返場を結ぶ路線として運行されていました。しかし2021年秋のダイヤ改正で路線再編を行い、現在の体系となっています。そのため、現在進行形で縮小段階なのですが、今後も縮小されていくことが予想されます。
以上、若葉台営業所3路線を紹介しました。営業係数が良くない路線が多々あるためくらい話題になりがちですが、もしかしたら連接バスが導入されるかもしれないと思うと明るい話題もありそうです。なかなか地域住民でないと乗る機会が少ない地域の路線ですが、バス旅の際には一度は足を運んでみてはいかがでしょうか?この地域は緑が多いため横浜市にものどかな部分があることを知れる良いきっかけになると思います。
長くなってしまったので今回はここまで、次回は緑営業所路線について解説します。
横浜市営バスの収支と運行頻度①~全体像~
横浜市は2023年の10月に横浜市営バスの令和4年度路線別収支を公表しています。
私もたまに市バスに乗りますし、1日乗車券で乗り回すこともあるくらいお世話になっているのでつい見てみました。
https://www.city.yokohama.lg.jp/kotsu/kigyo/zaimu/rosensyuushi.files/0025_20231002.pdf
やはり市営バス路線とだけあって赤字路線が多くなっていますがこれを見た私はどんな路線が儲かってる、もしくは儲かってないのかが気になったので調べてみました。
収支データだけだと面白くないなーということでじゃあバス路線ごとの運航頻度のデータも使って収支と運航頻度の関係性を見てみようと思い立ち、Googleを漁っているとこんなものを見つけました。
ここでは様々な公共交通のデータがオープンデータとして公開されています。
その中に横浜市営バスのデータも含まれておりこのデータも使ってみることにしました。
市バスのデータだけでもたくさんあって何の情報がどこに含まれているのかを調べるのも一苦労だったんですが、どうやらバス関連情報というのを使うと取得できそうということがわかりました。
これはGTFSという公共交通のデータを公開する際の世界標準フォーマットみたいで、非常に整理されたデータになっています。これをローカルにダウンロードして使ってみます。
ちなみに、もしこのデータを使いたいという方は提供先のHPで使い方を調べてみてください。ありがたいことに使い方を解説してくださっているネット記事もあるのでそちらをご参考までに。
GTFSの中には便情報(trip.txt)というファイルが含まれておりここには一つ一つの便の起点と終点がどこなのかとか、その便が何系統なのかなどの情報が入っています。
ここから系統ごとにカウントすることで系統ごとの運航頻度を抽出することができました、意外とあっさりできちゃうものなんですね。
これらのデータの加工と可視化にはPythonしかない!!!(多分そんなことはない笑)ということで必死にやり方をググりました。もともとPythonの知識はあるのですがPDFの加工経験はなかったので、というかそんなことできるの知りませんでした。
ということでPDFの加工にはPyMuPDFというパッケージを使いました。これ、importする時になぜかimport fitzって書くんですがなぜなんですかね??
GTFSもふたを開けてしまえばテキストファイルなのでPython上での扱いは簡単です。Pandasにたくさんお世話になりました。
処理を進めるとこれら2つのデータを統合する必要が出てくるのですが、どちらのデータにも系統番号がついてるのでその情報を元に統合しました。
ここで注意点があるのですが、それは
複数の路線が同じ系統番号をもっていることは考慮していない
ということです。
これは横浜市営バスだとよくあることなのですが、一つの系統番号が複数の路線にまたがっているものがあります。例えば23系統という路線はメインは青葉台駅~若葉台中央を走る路線ですが、そのほかにも青葉台駅~三保中央や中山駅前~若葉台中央といった路線があります。営業係数や損益は系統別に公表されているので路線によってはそれって複数路線含んでるからチートやんけ、ってのもあるので路線紹介の際はこれも踏まえて紹介したいと思います。
それではまず初めに運航頻度と営業係数の関係はどのようなものなのでしょうか?
とそのまえに、営業係数がなんなのかを一応説明すると、100円の営業収入を得るためにいくらかかるかという経営上の指標です。なので低ければ低いほど効率よく収入が得られていることになるため、低い方が好ましい指標です。最近だとJR東日本なども路線ごとの営業係数を公開していて度々話題になるので耳にしたことがある方も多いかもしれません。

横軸が運航頻度で縦軸が営業係数になっています。
これらの間には非線形(直線ではない)関係があることが見てとれますね。運航頻度が0から100くらいになると営業係数は大幅に改善しますが、そのままのペースで改善するわけはもちろんなく、運航頻度が100以上に増えると営業係数の改善のペースは落ちています。
営業係数はどれだけ効率よぐ稼げるかの指標という認識なので、効率よく稼げる路線は運航頻度が高くなっているといえるでしょう。まあ企業として当たり前っちゃ当たり前ですね。
次は実際の収益と運航頻度の関係性を見てみましょう

こちらはこれといったパターンは見受けられませんが、運航頻度がある程度多くても損益がマイナスの路線がありますね。
損益が多少悪くても稼ぐための効率はそこそこだからまあいいか、といった具合でしょうか(テキトーですみません)
ということで今回はすこし技術っぽい話が多かったですが、次回からは営業所ごとに分けて営業係数または損益が高い路線・低い路線をいくつかピックアップして、どんなとこを通るかや損益が低い原因等の考察を行っていきたいと思います!